井口昇監督インタビュー(2)からの続き
――中村有沙ちゃんが肩をはだけるシーンもこだわったんですか?
井口:あぁ、それも今言おうと思ったんですけど(笑)、そういうところに全部(注目が)きますね。あれは、台本に無かったんですよ。蛇に体がすり替ってて抜け殻が落ちてるっていうのに服をちゃんと着てるのは変だろうって思ったんですよ。そうやって色々考えたときに邪悪なものが心の中に湧いてきて、これは微妙に(服は)脱げてるだろうって僕は思ったんですね。それで、有沙ちゃんに言ったんですよ「ちょっとだけ肩出すのどうかな?」みたいな感じで、そしたら、全然平気に「あー、はいはいはい」みたいな反応をするわけですよ。で、うわー いいのかなぁと思いながら撮影しました。でも、ああいう一種の思春期の話ですから、どっかでそういう微妙なエロチズムは、必要なんじゃないかなと思っていました。あと、2年先の有沙ちゃんのあの肩はもう無い。今のこの肩を撮っていく必然性は絶対あるんだって考えました。
――物語のながれ上、不自然じゃないですしね。
井口:うん、そうなんですよ。
――でも、最初、観たときは、「あっ!肩が!」って思いましたね。
井口:楳図先生の漫画の中で、よく「あっ!」って驚くじゃないですか。あれみたいな感じで、お客さんもそうなってくれたらいいなっていうのがあったんですけどね。実は僕もあのカット大好きなんですよ。あのカットは最初の編集のときにもう少し短かったんですよ。それを最終的に伸ばしましたからね。「あと2秒伸ばして!」って言って。
<注意:以下に若干のネタばれがあります>
――成海璃子さんが蛇に変わっていくシーンで、襖から出たり消えたりする撮り方ははじめてみました。
井口:いまCG全盛だから、モーフィングとかカット割りで変わるのは何か嫌だなと思ったんですよ。そういうことやっても、絶対ハリウッドのCGには負けるわけだし、僕が昔子供のころに観た怪談映画の質感を思い出したら、ワンカットで変わったりしたのがあったような気がしたんですよ。それを観たときに本当に怖かったし、ワクワクもしたので、その質感を出したいなと思って、ここはワンカットだなと。
――そのシーンの撮影には、すごい時間かかってるんですよね。
井口:あのワンカットだけで2時間はかかってますね。あれ、メイクで一番凄い顔にして、それをだんだん取っていって撮影しているんです。あれ、成海ちゃん大変だったと思いますね。
――蛇が足を絡ませてくるシーンなんかは、撮影してる時点では、CGでどうなるかわからないんですよね。
井口:どうなんだろうって想像しつつ、普通に尻尾が絡んでいくよりは、女の子の足が絡んでいくほうが面白いだろうっていうのがあったんです。あのクライマックスは難しかったですね。小中さんが抽象的な書き方しているんですよ。「一体化する弓子と京子」っていうように一行で済まされてて、「一体化ってどうやってするんだよ!」って思ったんですけど、さんざん考えて、ああいう形で表現していったんです。原作とはニュアンスが変わっている部分はあるんですけど、でも観終わったときの質感が似ているようにしたいなと思ったんです。少女漫画のテイストっていうか、ちょっと甘酸っぱい感じが残っているものにしないとなっていうのがあって、そこはかなり意識しました。
井口昇監督インタビュー(4)へ続く・・・
《ロケーション協力》
上海家庭料理の店 上海小吃